新型コロナウイルス感染拡大
中国湖北省武漢市を起点に世界に広がった新型コロナウイルス。日本でも感染が拡大の一途を辿っています。本日27日に政府発表で、安倍総理は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、3月2日の月曜日から全国の小学校・中学校・高校・特別支援学校を臨時休校にするよう要請しました。
私は政府の対応が間違っているとか、批判をしたいわけではありません。現場で先頭をきって対応してくださる多くの方々には、感謝の気持ちしかありません。だからこそ、私たち一人ひとりが、その努力に応え、一丸となってウイルスと向き合えるように、冷静に対応していくことが求められます。今こそ、リスクマネジメントについて改めて学び、意識を高めていく必要があるのではないでしょうか。
リスクマネジメントは「リスク管理」と「危機管理」に分かれます。リスク管理とは、これから発生するかもしれないリスクを洗い出し、整理して回避を試みること。危機管理とは、実際に危機が発生したときに、その影響を最小限にとどめ、正常状態への回復を試みることをいいます。どちらも、「あらゆる事態を想定し、最善の準備で整え、冷静に対応する」意味では同じことを指します。
私は、リスクマネジメントにおいて、「想定Assumption」「最善Better」「冷静Calm」の三要素が重要だと改めて感じています。私は、これを「リスクマネジメントのABC」と呼んでいます。では、この三要素について説明します。
リスクマネジメントの「A」
今回の新型コロナウイルスへの対応が、「Assumption=あらゆる事態を想定」していると言えるでしょうか。
あらゆる事態とは、感染症でいえば、拡大がどの範囲まで広がっていくかをフェーズ毎に予測することにあります。しかし、国からはフェーズ毎に分けた指針が示されることはなく、各自治体の対応はばらばらでした。感染症法では、厚労省と、保健所機能を持つ都道府県が中心として記載されていることもあり、都道府県と実際に感染が確認された市町村が主となって対応しています。しかし、どれだけの自治体が、フェーズに分けた指針を示せていたでしょうか。それに伴い、どれだけの人々が不安に陥り、情報に振り回されていたでしょうか。一つひとつの方針をぶつ切りに出しては、現場は混乱するだけです。
最低・最悪の事態を想定したフェーズから、逆算をして現状を認識することが何よりも重要であると考えます。そうしたフェーズ毎の指針を示せば、もっとこうしたほうがいい、このリスクもあるぞと知恵が集まります。国や自治体のリスクマネジメントの基本は、指針を示して国民に心の余裕を持たせることだと思います。これは、一度決めて終わりではなく、その都度柔軟に修正しながら、対応していくことが望ましいと思います。
リスクマネジメントの「B」
今回の新型コロナウイルスへの対応は、「Better=最善の準備を整えている」と言えるでしょうか。
最善の準備を整えるとは、Aで示されたフェーズ毎に対して、どの段階で何をどのように判断するのか、またその根拠はどうするのか、ということです。また、感染症などのリスクマネジメントは一人では行うものではなく、周りの人たち(チーム)と行うことですから、職場の人、家族や友人などとも情報を共有し、いざという時にすぐに対応できることが大事だと考えます。
リスクマネジメントの「C」
今回の新型コロナウイルスへの対応が、「Calm=冷静に対応している」と言えるでしょうか。
A及びBの対応は、焦って行うものではありません。冷静にならなければ、社会全体がパニックになってしまいます。それぞれの決断を下す立場にあるリーダーへ不安を煽るようなことは控えなくてはなりません。メディアも、AとBについての確認は追求すべきですが、イベントなどを開催するか中止するかを二択で迫ることは、本質的ではないと思います。
私たち一人ひとりがAとBを理解し、冷静に対応していけば自ずと危機からは脱することができるはずです。
おわりに
もちろん、想定外ということはあり得ます。だからこそ、リスクマネジメントのABCを何度も確認し、想定外が起きたら、また考え直していくという訓練をしなくてはなりません。だからこそ、リスクマネジメントには妄想やクリエイティブな発想が求められると思います。日ごろは、仕事ではなく、勉強会やシミュレーションゲームのような感覚で話し合うことの方が望ましいのかもしれません。
また、リスクだけに対処するのではなく、判断した状況下で、国民が安心できる体制作りも大切です。全国の小学校・中学校・高校・特別支援学校を臨時休校の要請が出された今、子どもたちにはオンライン授業や、オンライン診察の解禁、そしてご両親たちが対応しやすくするために、テレワークの充実や子どもたちのお世話を自宅でしてくれるシッター制度の拡充などが必要なのではないでしょうか。
感染症をはじめとするリスクマネジメントは、一人で考えるものではありません。また、どこかの対応を批判することでもありません。いろんな関係各所との利害調整が複雑に絡み、実際の現場では思うようにスムーズに意思決定が進まないことも起こり得るものです。
そんなときだからこそ、一人ではなく、みんなでまちのことを考え、みんなで実行していく姿勢が大切であり、それが私の目指す「わたしたち事のまちづくり」なのです。
(2020年2月27日)
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