この国は本気なのか 有機農業
2万haから、100万ha。
これは、2021年「みどりの食料システム戦略」において、政府が今から2050年までに有機農業をどれだけ増やすか定めたものです。あと約26年で50倍です。日本全体の農場が約400万haですから、1/4を有機農業にする大胆かつ大規模な改革です。
政策は掲げて終わりではなく、実践してなんぼです。有機農業を営む現場からは、「どうすればいいの?」と不安と怒りの声があがっています。立てた目標に対し、政策が追いつかず、現場任せになっているのです。今ある政策は、機械の導入や販売促進に限定されており、現場の不安や希望に応えたものとなっていません。
私は、有機農業は積極的に推し進めるべきだと考えます。それは、食の安全・安心や健康面だけでなく、「温暖化を乗り越える土づくり」をしたいからです。昨今の異常気象は、作物を育てる土のひび割れや根腐れなど農業に悪影響を及ぼしています。土を強くする意味でも、有機農業を広めることが肝要です。しかし、栽培の難しさ、労力の多さ、土づくりに要する時間、安定した収穫量を確保することの難しさなど、やりたくても一歩前に進めない難しさがあります。
だからこそ、取り組むべき政策は、
①リスクを乗り越える仕組みづくり
自然災害のリスクや栽培のハードルの高さを緩和できるような一定の生産補償や融資制度を整え、「やってみたいけど…」と立ち止まっている方が前に進める制度整備を目指します。
②取引価格の適正化
現状、有機であろうとなかろうと同じ値段で取引される場合があります。有機JAS認証をとるには、その分、手間や費用がかかります。付加価値として取引価格に反映させる等、今、有機農業に取り組んでいる方々が、もっとやってみようと思えるインセンティブが必要です。
③需要量を増やす
オーガニック給食など安定的な供給先を増やしたり、消費者教育による有機農業への理解促進など需要を増やすことも大切です。
私は農政はグラデーションだと思います。有機農業が全てでも、慣行農業が全てでもありません。どんな有事でも、国民みんながお腹いっぱい食べられるように、土をつくり、国を富ませていくために、栽培方法にもバランスが必要です。それぞれの手法に即した政策を整備し、農家を営む方々が自信を持って堂々とできる産業へと進化していけるよう、私も変わらずに取り組み続けます。